ある中年の男の人が、アコムの噂を聞きました。過払い金請求が増えて、利用者が払いすぎた金額を取り返している、というのです。その人もかつて、アコムで借りていました。返済は、全部終えています。自分も払いすぎた分があって、それは取り返せるのだろうか、と考え始めました。

昭和から平成に年号が変わる頃、異常な好景気が起こりました。それは、バブル経済と呼ばれました。土地や株が、投機によって実態以上に値上がりしました。しかし、平成に入って数年経つと、バブル経済が崩壊しました。国の金融引き締めの影響などを受けたようです。国内の経済は混乱しました。世間では、一気に金回りが悪くなりました。金を借りる人が増えました。

その頃、貸付金の利息の限度は、利息制限法では、年に約20%でした。利息制限法とは、借金の利率を規制する法律です。一方、同じ利息が、出資法では約30%でした。出資法とは、出資金や借金の利率を規制する法律です。貸金業者の多くは、高い方の30%までの利率で貸し付けたようです。20%から30%までの間の利率は、灰色の、はっきりしない部分で、グレーゾーンと呼ばれていました。

こうした貸し付けは、2つの法律の罰則の違いが原因だったようです。利息制限法では、民事罰だけでした。出資法では、刑事罰までありました。刑事罰を受けないで済む利率は、30%以下です。刑事事件にならなければ、高い金利で貸し付けてもいいだろう、と考えが働いたようです。利用者は、よく分からないながら、立場の弱さもあったのか、高い金利で借りていたようです。

その後、多重債務者が増え、社会問題になりました。自殺や犯罪が増えて、国会、政府が動き出しました。平成の時代が10年も経つと、出資法と貸金業法が改正されました。貸金業法とは、貸金業の運営と利用者の保護が目的の法律です。出資法、貸金業法の利息の限度が、利息制限法の約20%まで引き下げられました。グレーゾーンは廃止されました。その後は、20%を超えて貸し付けると、刑事罰の対象になります。また、貸しすぎ、借りすぎを抑えるために、総量規制が行われました。融資の総量を国が規制しました。

その結果、利用者の多くが、利息制限法の限度を超えた利息を支払っていたことに気づきました。払いすぎた分を返してもらう動きが、あちこちで始まりました。ある人たちは、直接、アコムと交渉しました。ある人たちは、弁護士などの専門家に依頼して、交渉してもらいました。それが、過払い金請求です。アコムの場合は、請求が多すぎて、集団訴訟になったようです。

この中年の男の人は、払いすぎた金は返してもらいたい、と思いました。しかし、アコムを敵に回して大丈夫でしょうか。嫌がらせは、してこないでしょうか。今では、アコムは有名な銀行の子会社になっているようです。それなら、信用問題になるような、変な真似はしないかもしれません。過払い金請求の時効は10年のようです。10年過ぎたら、請求する権利がなくなるようです。市区町村の担当課とか、消費生活センターとか、司法書士会とか、弁護士会とか、いくつか相談できる所はありそうです。